論文では、経営者側の代表である日本経団連の見解を紹介し、「パートと正社員の均等待遇の法定に強く反対している。経営上の都合に応じて、正社員と低廉なパートタイム労働者を適当に使い分けるという現状のあり方が最も望ましい、という経営者の本音が表明されているといえよう」との評価を下している。また、今回法律改正を見送ったことに対しても、「法律で使用者の『努力義務』だけを定め、指針にもとづく行政指導によってその実現を図るという方式は、それ自体権利義務関係の希薄化を招くとか、法を非民主的なものに変質させるなどの問題を内在させている。
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のみならず、それが目的達成のためにいかに無力であるかはすでにわれわれが十分に経験したところである」として、行政指導が均等化に対してほとんど効果をもたらさないことを看破している。このように、パート法改正をめぐる一連の審議の過程を見ると、パートタイム労働者のための法律修正がいかに困難なものであるかが浮き彫りになる。利害関係者が集まって議論の集約を図るには、限界があると感ぜずにはいられない。使用者側の考えがあまりにも強く反映されているとしか思えない。審議会には労働者の代表も参加しているが、パートタイム労働者という新しいグループ層の利害関係者の力は、弱いものである。労働組合はこの問題に対する積極的な立場を表明しているが、どこまで本気で対処しようとしているのか、深く考えると、その立場は微妙である。なぜなら、パートタイム労働者の多くは労働組合には加入していないからである。労働組合は、どちらかと言えば、既存の正坦雇用者を守る立場である。さらに、パートタイム労働者の均等待遇が、賃金の引き上げではなく、仮に正社員の賃金の引き下げに向かった場合、労働組合が均等待遇に賛成するかは微妙な問題であろう。この問題に対して、行政の果たす役割は重要である。本来、厚労省は、労働者の利益を守るために存在しているはずである。その対象は、既存の労働者だけではないはずだ。中立を守ったと言えば聞こえがいいが、それがパートタイム労働者の増加という新しい事態に対応すべき行政本来の姿とは思えない。政策決定過程では、弱い立場にいる非正規雇用の権利を守ることも重要な責務と言っていいだろう。新しい時代に対応した行政の強い姿勢が必要になっていることを認識すべきであろう。